説明

潰瘍治療用プロトンポンプ阻害剤としての環付加ピロール化合物

変数が明細書中に記載の意味である式(1)の化合物を使用することにより、哺乳動物における胃プロトンポンプの阻害が達成される。好ましい式(2)の化合物は、治療において、胃粘膜の傷害、損傷または病変(例えば、胃粘膜病変および潰瘍)を緩和、軽減、有効に治療、逆行または予防する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環付加ピロール化合物、特にML3000、その塩または誘導体の、プロトンポンプ阻害剤としての使用に関する。
【0002】
発明の背景
消化性潰瘍は、先進国で最もよく見られる疾患の1つである。
【0003】
酸分泌阻害薬は最も頻繁に処方される医薬品の1つであり、このことは「酸のないところに潰瘍はない(No acid, no ulcer)」という生理学的格言を反映している。HClの逆拡散に対する胃粘膜防壁が薬理学的または病態生理学的に突破されると、胃上皮単層に急速にびらんが生じ、その結果として粘膜に潰瘍ができる。壁細胞のヒスタミンH2受容体における拮抗(シメチジン)、または胃プロトンポンプへの直接の共有結合による誘導体化および不活化(オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール)による酸分泌の阻害は、胃潰瘍の緩和および治癒促進のために日常的に行われている。胃プロトンポンプはH+/K+-ATPアーゼとしても知られる酵素である。該ポンプは胃壁細胞の膜内にあり、血液から管腔へのプロトン輸送(その結果、胃内容物のpHを下げる)に関与している。
【0004】
オメプラゾールそれ自体は、実際は酸性条件下で活性薬物(すなわちその対応するスルフェンアミド)へと転化するプロドラッグである。オメプラゾールの作用機序は良く研究されており、H+/K+-ATPアーゼの1(または2)個のチオール基の、化学的に活性なスルフェンアミドのイオウ原子に対する求核攻撃を含むことが分かっている。その結果として酵素のチオール基に生じた化学修飾(H+/K+-ATPアーゼのイオウとベンズイミダゾール・ピリジニウム塩のイオウとの間にジスルフィド結合が形成される)が、実際のプロトンポンプ阻害を引き起こす。しかし、前記プロドラッグの活性な酵素阻害剤への転化は酸性培地においてのみ達成されるが、この際に活性スルフェンアミドの実質的な分解も生じるという点を重視すべきである。要約すると、酸性環境におけるオメプラゾールの不安定性は、オメプラゾールが活性化されてプロトンポンプ阻害剤となるための必要条件ではあるものの、この薬物の主な欠点となっている。
【0005】
酸分泌に加えて、インターロイキン8の分泌は、胃潰瘍形成において重要な役割を果たすさらに別の胃粘膜機能である。
【0006】
潰瘍誘発菌であるヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)は、IL-8分泌の速度と規模をin vitroおよびin vivoの両方で高め、またIL-8遺伝子発現をアップレギュレートすることが分かっている。同様のIL-8前分泌効果が、胃上皮細胞のIL-1b刺激の結果として見られる。
【0007】
アセチルサリチル酸(ASA)、ジクロフェナク、インドメタシン、イブプロフェンおよびナプロキセンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、臨床で広く使用されている。薬理学の観点から言えば、これらはシクロオキシゲナーゼ(COX)の阻害剤として作用する。
【0008】
NSAIDの抗炎症特性は、それらによるプロスタグランジン合成の抑制と関係している。しかし、胃のプラスタグランジンを抑制すると胃粘膜の血流量が減少し、また同時に、様々な刺激原による局所傷害に対する粘膜の感受性が低下する。NSAIDにより誘発される胃潰瘍形成は、これらの薬物の実用性を著しく制限している。
【0009】
薬理学的に同様に作用するピロリジンは、多くの文献により公知である。たとえば、消炎活性のあるピロリジンは、Arch. Pharm. 319, 65-69 (1986); 319, 231-234 (1986); 318, 661-663 (1985); 318, 663-664 (1985); 319, 500-505 (1986); 319, 749-755 (1986), 327, 509-514 (1994); 330, 307-312 (1997); ならびに、J. Med. Chem. 1987, 30, 820-823および1994, 37, 1894-1897に記載されている。
【0010】
別のピロリジンは米国特許第5,260,451号(欧州特許第0397175号に相当)、ならびに、WO 95/32970; WO 95/32971; およびWO95/32972に記載されている。これらの化合物は構造式
【化1】

【0011】
により表され、環付加ジアリールピロール基および第3の酸性残基R3を共通して有する。上記の化合物は高い親油性、高いバイオアベイラビリティーおよび中程度の半減期を特徴とする(Drugs of the Future, 1995, 20(10): 1007-1009)。
【0012】
同様の構造の別のピロリジンは、DE 198 45 446.6およびWO 01/05792に記載されている。さらに、米国特許第4,232,038号によれば、アルキルスルフィニルベンゾイルおよびアルキルスルホニルベンゾイル置換ピロリジンは、抗炎症、鎮痛および解熱特性を有すると言われている。DE 196 24 290.8およびDE 196 24 289.4によれば、このタイプのある種の化合物は脂肪減少作用を有する。
【0013】
構造式(Ia)
【化2】

【0014】
のML3000([2,2-ジメチル-6-(4-クロロフェニル)-7-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ピロリジン-5-イル]-酢酸)は、COXおよび5-リポキシゲナーゼ(5-LO)の非抗酸化剤平衡型二元阻害剤である(1)。本薬物は、COX-1およびCOX-2の両方を阻害するCOXの非選択的阻害剤である。本薬物は鎮痛、解熱および抗炎症活性を有し、ラットにおけるカラギーナン誘導性の足の浮腫、およびラットアジュバント関節炎を含め、多くの動物モデルにおいて強い抗炎症作用を有することが示されている(2)。さらに、ML3000が優れた胃腸耐性を示すことが報告されている(12、13)。しかし、胃保護特性は観察されていない(11)。
【0015】
驚くべきことに、ML3000のようなある種の環付加ピロール化合物が、有意な胃保護効果を有することが見いだされた。この現象は、胃プロトンポンプの有意な阻害だけでなく、胃上皮細胞におけるIL-8分泌の阻害とも関連している。
【発明の開示】
【0016】
そこで、本発明は下記の式(I) により表される環付加ピロール化合物およびその光学異性体、生理的に許容される塩および誘導体の、胃プロトンポンプを阻害するための使用に関する。
【化3】

【0017】
[式中、
Xは、CR8R9、S、O、NR12またはC(O)を表し;
Aは、CR10R11、またはXとラジカルR6およびR7が結合した原子との間の結合を表し;
ラジカルR1、R2、R3の第1は、
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲノアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、N-アルキルスルファモイル、N,N-ジアルキルスルファモイル、アルキルスルホンアミドおよびアルキルスルホン-N-アルキルアミドからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよいアリール;または、
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲノアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、N-アルキルスルファモイル、N,N-ジアルキルスルファモイル、アルキルスルホンアミドおよびアルキルスルホン-N-アルキルアミドからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよい、N、OおよびSから独立に選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する、芳香族または非芳香族の、単環式または二環式の、ベンゾ付加していてもよい複素環基を表し;
ラジカルR1、R2、R3の第2は、
ハロゲン、シクロアルキル、アルコキシ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシおよびトリフルオロメチルからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよいアルキル;
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロゲノアルコキシおよびヒドロキシからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよいシクロアルキル;
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲノアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、N-アルキルスルファモイル、N,N-ジアルキルスルファモイル、アルキルスルホンアミドおよびアルキルスルホン-N-アルキルアミドからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよいアリール;または、
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲノアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、N-アルキルスルファモイル、N,N-ジアルキルスルファモイル、アルキルスルホンアミドおよびアルキルスルホン-N-アルキルアミドからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよい、N、OおよびSから独立に選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する、芳香族または非芳香族の、単環式または二環式の、ベンゾ付加していてもよい複素環基を表し;
ラジカルR1、R2、R3の第3は、H、アルキル、ハロゲノアルキル、ヒドロキシアルキル、-CHO、-COOH、ハロゲン、シアノ、アルキルスルホニル、スルファモイルまたはB-Yを表し、ここで、
Bは、ヒドロキシまたはアルコキシにより置換されていてもよいアルキレンまたはアルケニレンを表し;
Yは、-COOH、SO3H、OPO(OH)2、OP(OH)2、-CHOまたはテトラゾリルを表すか;あるいは、
ラジカルR1、R2、R3の第2および第3は、これらが結合している原子と共に、飽和または不飽和シクロアルキルを表し;
R4-R11は、同一であっても異なっていてもよく、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、COOHまたはアシルオキシを表し、ここで、隣接するラジカルの場合は結合を表してもよく、または同一炭素原子上に2つの置換基があるラジカル(ジェミナルなラジカル)はそれらが結合するC原子と共にカルボニルまたはシクロアルキルを表してもよく;
R12は、水素、アルキルまたはフェニルを表す]。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
「アルキル、アルコキシ等」の用語は、CH3、C2H5、n-プロピル、CH(CH3)2、n-ブチル、CH(CH3)-C2H5、イソブチル、C(CH3)3、n-ペンチルまたはn-ヘキシル、特に、CH3、C2H5またはCH(CH3)2のような、好ましくは、他に特に言及しない限り、1から8、特に1から6、より好ましくは1から4の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキル基を含む。ラジカルR1からR12の置換基としては、「アルキル、アルコキシ等」は好ましくは1から4の炭素原子を含む。
【0019】
置換された「アルキル、アルコキシ等」は、特に、
ハロゲノアルキル、すなわち、フッ素、塩素、臭素および/またはヨウ素により部分的にまたは完全に置換されたアルキル、たとえば、CH2F、CHF2、CF3、CH2Cl、2-フルオロエチル、2-クロロエチルまたは2,2,2-トリフルオロエチルであって、ラジカルR1からR12の置換基としては、ハロゲノアルキルは好ましくはCHF2および特にCF3を意味する;
ハロゲノアルコキシ、すなわち、フッ素、塩素、臭素および/またはヨウ素により部分的にまたは完全に置換されたアルコキシ、たとえば、上記のハロゲノアルキル残基に対応するハロゲノアルコキシ残基であって、ラジカルR1からR12の置換基としては、ハロゲノアルコキシは好ましくはOCHF2および特にOCF3を意味する;
アルコキシアルキル、すなわち、アルコキシにより置換されたアルキル、たとえば、-CH2-OCH3または2-メトキシエチル;
ヒドロキシアルキル、すなわち、ヒドロキシにより置換(好ましくは1置換)されたアルキル、たとえば、ヒドロキシメチルまたは2-ヒドロキシエチル;
トリフルオロメチルアルキル、すなわち、トリフルオロメチルにより置換(好ましくは1置換)されたアルキル、たとえば、上でヒドロキシアルキルに関して記載された残基をヒドロキシ基の代わりにトリフルオロメチル基で置換したもの;
トリフルオロメトキシアルキル、すなわち、トリフルオロメトキシにより置換(好ましくは1置換)されたアルキル、たとえば、上でヒドロキシアルキルに関して記載された残基をヒドロキシの代わりにトリフルオロメトキシにより置換したもの;
シクロアルキルアルキル、すなわちシクロアルキルにより置換(好ましくは1置換)されたアルキル、たとえば、上でヒドロキシアルキルに関して記載された残基をヒドロキシの代わりにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルにより置換したもの、
を含む。
【0020】
「シクロアルキル」の用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のような、好ましくは、他に特に言及されない限り、3から9、特に3から7、より好ましくは5から6炭素原子を有する、単環または二環アルキル基を含む。
「アルキレン」の用語は、メチレンおよびエチレンのような、好ましくは、他に特に言及されない限り、1から8、特に1から6、より好ましくは1から4炭素原子を有する、直鎖または分枝鎖アルキレン基を含む。アルキレンがヒドロキシまたはアルコキシにより置換される場合は1置換が好ましい。
【0021】
「アルケニレン」の用語は、エテニレンのような、好ましくは、他に特に言及されない限り、2から8、特に2から6、より好ましくは2から4炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の、一または多不飽和アルキレン基を含む。
【0022】
アシルオキシは、-OCORで、Rがアルキルまたはアリールを表すものを意味する。好ましい例はアセチルオキシおよびベンゾイルオキシである。
【0023】
-COOアルキルは、CO-OCH3、CO-OC2H5、CO-OCH2-C2H5、CO-OCH(CH3)2、n-ブトキシカルボニル、CO-OCH(CH3)-C2H5、CO-OCH2-CH(CH3)2、CO-OC(CH3)3のようなアルコキシカルボニル、特にCO-OCH3、CO-OC2H5、CO-OCH(CH3)2またはCO-OCH2-CH(CH3)2を意味する。
【0024】
-COOアルクフェニル(-COOAlkPhenyl)は、ベンジルオキシカルボニルのような、アルキル部分でフェニルにより置換されたアルコキシカルボニル基を意味する。
【0025】
アルキルチオは、SCH3、SC2H5、SCH2-C2H5、SCH(CH3)2、n-ブチルチオ、1-メチルプロピルチオ、2-メチルプロピルチオ、SC(CH3)3のような、-S-アルキルを意味し、アルキルスルファニルまたはアルキルメルカプトとも呼ばれる。メチルチオが好ましい。
【0026】
アルキルスルフィニルは、SO-CH3、SO-C2H5、n-プロピルスルフィニル、1-メチルエチルスルフィニル、n-ブチルスルフィニル、1-メチルプロピルスルフィニル、2-メチルプロピルスルフィニル、1,1-ジメチルエチルスルフィニルのような、-S(O)-アルキルを意味し、アルキルスルホキソとも呼ばれる。メチルスルフィニルが好ましい。
【0027】
アルキルスルホニルは、SO2-CH3、SO2-C2H5、n-プロピルスルホニル、SO2-CH(CH3)2、n-ブチルスルホニル、1-メチルプロピルスルホニル、2-メチルプロピルスルホニル、SO2-C(CH3)3のような、-S(O)2-アルキルを意味し、アルキルスルホンとも呼ばれる。メチルスルホニルが好ましい。
【0028】
スルファモイルは、-S(O)2NH2を意味し。アミドスルホニルまたはスルホン酸アミドとも呼ばれる。
【0029】
N-アルキルスルファモイルは、1置換スルファモイル-S(O)2NH-アルキル、たとえば、-S(O)2NH-CH3を意味する。
【0030】
N,N-ジアルキルスルファモイルは、N-結合アルキル残基が同一であっても異なっていてもよい2置換スルファモイル-S(O)2N-(アルキル)2、たとえば、-S(O)2N(CH3)2を意味する。
【0031】
アルキルスルホンアミドは、NHSO2-CH3、NHSO2-C2H5、n-プロピルスルホンアミド、NHSO2-CH(CH3)2、n-ブチルスルホンアミド、1-メチルプロピルスルホンアミド、2-メチルプロピルスルホンアミド、NHSO2-C(CH3)3のような-NHS(O)2-アルキルを意味する。メチルスルホンアミドが好ましい。
【0032】
アルキルスルホン-N-アルキルアミドは、N-およびS-結合アルキル残基が同一であっても異なっていてもよい-N(アルキル)S(O)2-アルキル、たとえば、N(CH3)SO2-CH3を意味する。
【0033】
カルボニル、CHO、-COOH、-SO3Hは、それぞれ、>C=O、ホルミル、カルボキシ、カルボキシカルボニルおよびスルホを意味する。
【0034】
「アリール」は、好ましくはナフチルおよび特にフェニルを意味する。
【0035】
「ハロゲン」の用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素原子を含む。通常フッ素および塩素が好ましく、場合によっては臭素も好ましい。
【0036】
「複素環残基」は、芳香族または非芳香族の、単環または二環式、および/またはベンゾ付加した、特に5または6員環複素環残基を含む。例としては、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピラジニル、インドリル、キノリニル、特に、ピリジル、ピリミジルおよびイソキノリニルのような、窒素を含む複素環残基が挙げられる。芳香族残基にはまた、チエニル、ベンゾチエニル、フラニルおよび特にベンゾフラニルのような、酸素または硫黄原子を含む複素環残基も含まれる。また、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、イソキサゾリルおよびオキサゾリルのような、2以上の異なるヘテロ原子を含む複素環残基も含まれる。チエニル、ピリジルおよびチアゾリルは好ましい芳香族複素環残基である。非芳香族残基には、ピロリジニル、ピペリジニルおよびピペラジニルのような、窒素を含む複素環残基が含まれる。これには、モルホリニルのような2以上の異なるヘテロ原子を含む複素環残基も含まれる。
【0037】
置換された残基、特にアルキル、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールは、好ましくは1、2または3置換である。
【0038】
[α]-環付加物(annelland)は、6、または特に5員環の複素環式または特に脂環式であり、脂環式である場合には不飽和または特に飽和、および/または置換または無置換であってよい。
【0039】
式(I)の[α]-環付加ピロール化合物には、特に、XがCR8R9を表し、AがXとラジカルR6およびR7を結合する原子との間の結合を表すもの(ピロリジン);XがCR8R9を表し、AがCR10R11を表すもの(インドリジン);XがNR12を表し、AがXとラジカルR6およびR7を結合する原子との間の結合を表すもの(ピロロ[1,2-a]イミダゾール);XがSを表し、AがXとラジカルR6およびR7を結合する原子との間の結合を表すもの(ピロロ[2,1-b]チアゾール);XがSを表し、AがCR10R11を表すもの(ピロロ[2,1-b]1,3-チアジン);XがOを表し、AがCR10R11を表すもの(ピロロ[2,1-b]1,3-オキサジン);XがOを表し、AがXとラジカルR6およびR7を結合する原子との間の結合を表すもの(ピロロ[2,1-b]オキサゾール)で、言及されなかった残基は上記の意味を有する化合物が含まれる。
【0040】
[α]-環付加物が5員環不飽和残基である場合、特にR4およびR6は、たとえば、ピロリジン、ピロロ[2,1-b]イミダゾールおよびピロロ[2,1-b]チアゾールの場合のように、結合を表す。[α]-環付加物が6員環不飽和残基である場合、特にR4およびR6は、たとえばピロロ[2,1-b]1,3-チアジン、ピロロ[2,1-b]1,3-オキサジンまたは5,6-ジヒドロインドリジンの場合のように、また、場合によってはR8およびR10も、たとえばインドリジンの場合のように、結合を表す。
【0041】
本発明の特定の実施形態によれば、特定の[α]-環付加物に結合していない場合、R4-R11は、同一であっても異なっていてもよく、水素またはアルキルを表す。本発明の別の特定の実施形態によれば、ラジカルR4、R5、R6およびR7の少なくとも1つがヒドロキシアルキル、特にヒドロキシメチルを表し、R4、R5、R6およびR7のうちの残りのラジカルは独立にHまたはアルキルを表す。この実施形態によれば、R4がヒドロキシアルキル、特にヒドロキシメチル、R5がHまたはアルキル、そしてR6、R7が独立にHまたはアルキルであるのが好ましい。本発明の別の特定の実施形態によれば、ラジカルR8およびR9のうちの一方がH、アルキル、ヒドロキシアルキルまたはアルコキシアルキルを表し、他方がヒドロキシ、アルコキシ、カルボキシまたはアシルオキシを表す。あるいは、R8およびR9は、これらが結合するC原子と共にカルボニル基を表す。
【0042】
6,7-ジヒドロ-5H-ピロリジン、すなわち、式(I)において、XがCR8R9を表し、AがXとラジカルR6およびR7を結合する原子との間の結合を表し、R4、R5、R6、R7、R8、R9が同一であっても異なっていてもよく、上記の意味を有し、好ましくは水素またはアルキルを表す化合物は特に有用である。R4からR9が水素である、またはラジカルR4からR9のうち少なくとも1つまたは2つ、たとえばR6および/またはR7がアルキル、特にメチルを表す、6,7-ジヒドロ-5H-ピロリジンは特に好ましい。
【0043】
本発明の重要な態様によれば、式(I)において、ラジカルR1、R2、R3の第1および第2、好ましくはR1およびR2が独立に、特にハロゲン、アルキルおよびハロゲノアルキル、特にCF3からなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよい、アリールおよび芳香族複素環残基から選択されるΠ電子の豊富な系、特にフェニルを表し、R1が好ましくは無置換フェニルで、R2が好ましくは4-置換フェニルであるような化合物が特に有用である。
【0044】
本発明の別の重要な態様によれば、式(I)において、ラジカルR1、R2、R3の第3、好ましくはR3が、COOHまたはB-Y(ここで、YはCOOHで、Bは好ましくはアルキレンを表す)のような酸性残基を表す、またはB-Y(ここで、Yは、テトラゾリルである)のような酸性残基の前駆体を表すような化合物が特に有用である。
【0045】
構造式(Ia)
【化4】

【0046】
により表される[6-(4-クロロフェニル)-2,2-ジメチル-7-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ピロリジン-5-イル]-酢酸 (ML3000)、その生理的に許容される塩および誘導体、たとえば生理的に加水分解されるエステルの使用が特に好ましい。
【0047】
生理的に許容される塩には、酸または塩基付加塩が含まれる。
【0048】
酸付加塩は、たとえば、式(I)の化合物と、塩酸、硫酸、硝酸またはリン酸のような無機酸との、または有機酸、特にカルボン酸、たとえば、酢酸、酒石酸、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、アミグダリン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、フマル酸、グルコン酸、またはスルホン酸、たとえば、メタンスルホン酸、フェニルスルホン酸およびトルエンスルホン酸等との塩である。
【0049】
塩基付加塩は、たとえば、式(I)の化合物と、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムのような無機塩基との、またはモノ、ジ、またはトリエタノールアミン等のような有機塩基との塩である。
【0050】
生理的に許容される誘導体には、特に、in vivoで式(I)の化合物またはその活性型(代謝産物)に再変換する、式(I)の化合物のプロドラッグが含まれる。例としては、ラジカルR1、R2、R3の第3が酸性残基を表す式(I)の加水分解可能なエステル、たとえば、それらのアルキル(ラジカルR1、R2、R3の第3が官能基COOアルキルを含む)、アラルキル(ラジカルR1、R2、R3の第3が官能基COOアルクアリール(COOAlkaryl)、たとえば、COOアルクフェニルを含む)、ピバロイルオキシメチル、アセトキシメチル、フタリジル、インダニルおよびメトキシメチルエステルが挙げられる。
【0051】
「プロトンポンプ阻害剤」という用語を本明細書中で使用する場合は、胃のH+,K+-ATPアーゼ活性を阻害する化合物を指すものと理解されたい。この活性は、周知のアッセイにおいて、例えば基質ATPからの無機リン酸の放出という形で測定することができる(Hongo T.ら、J.J.Pharmacol. 52: 295(1990))。好ましいのは、半最大阻害濃度(IC50)が50μM以下である式(I)の化合物である。本発明によれば、IC50が5μM以下である式(I)の化合物を使用すると都合が良い。非常に効果的な式(I)のプロトンポンプ阻害剤は、IC50が0.5μM以下である。別の態様によれば、プロトンポンプを可逆的に阻害する式(I)の化合物が好ましい。さらに別の態様によれば、そのプロトンポンプ阻害活性が約3〜8のpH範囲では本質的にpH非依存性である式(I)の化合物が好ましい。
【0052】
かかる化合物は、ハイスループット・スクリーニング(HTS)手順などの周知のスクリーニング手順を用いて、式(I)の化合物の中から同定することができる。典型的な手順には、多くの式(I)の候補化合物各々による胃のH+,K+-ATPアーゼ阻害について試験し、所望の活性を有するものを同定することが含まれる。また、かかるプロトンポンプ阻害化合物が同時に抗炎症作用も有しうることは理解されよう。
【0053】
従って、特定の態様によれば、本発明は、式(I)の化合物の中から選択されるプロトンポンプ阻害剤の使用に関する。これらの式(I)の化合物は、胃酸分泌阻害剤として有効である。
【0054】
より一般的な意味では、前記化合物は、哺乳類および特にヒトにおける胃酸関連症状(胃炎、十二指腸炎、潰瘍形成、特に胃潰瘍および十二指腸潰瘍、逆流性食道炎およびゾリンジャー・エリソン症候群など)の予防ならびに治療のために使用することができる。胃炎はびらん性または非びらん性のものであっても、急性または慢性のものであってもよい。特に、前記化合物は抗潰瘍薬として有用である。
【0055】
さらに、前記化合物は、例えばNSAID療法中の患者、非潰瘍性消化不良の患者、症候性胃食道逆流性疾患の患者、およびガストリン産生腫瘍の患者において、胃酸抑制効果が望ましい他の(特に胃腸の)疾患の治療に使用することができる。また、本発明の化合物を、集中治療を要する患者、急性上部消化管出血がみられる患者に対して術前および術後に使用することにより、胃酸の吸引を防ぎ、またストレス潰瘍の形成を予防および治療することができる。さらに、本発明の化合物は、乾癬の治療ならびにヘリコバクター(Helicobacter)感染およびこれらに関連する疾患の治療に役立ちうる。また本発明の化合物は、ヒトを含む哺乳類における炎症状態の治療に使用することもできる。
【0056】
特定の態様によれば、本発明は、式(I)の胃保護化合物の使用に関する。「胃保護(gastroprotective)」という用語を本明細書中で使用する場合、特に胃腸粘膜および特に胃粘膜の局所傷害に対する感受性を低下させうる化合物を指すものと理解されたい。かかる局所傷害は、刺激原により引き起こされるものであってもよい。本発明の特定の態様によれば、該刺激原は、本質的にNSAIDおよびCOX阻害剤からなる群より選択される。
【0057】
潰瘍発生の初期に肉眼で観察される病理学的所見は、胃上皮単層のびらんである。びらんが進行するにつれて胃粘膜の保全性が弱まり、胃腸粘膜の一部が粘膜筋板を貫通する。
【0058】
NSAIDやH.ピロリ(H.pylori)などのある種の因子による正常粘膜の防御および修復における変化もまた、消化性潰瘍疾患の病理に関与している。
【0059】
本発明の1態様によれば、式(I)の化合物の使用は、酸によって仲介される粘膜の損傷とその後の潰瘍形成を治療または予防することを対象としている。特に、該使用は、それらに伴う病理学的変化を治療または予防することを対象としている。
【0060】
本発明は、特に胃腸粘膜の傷害、損傷または病変に悩まされているかまたは将来悩む可能性のある哺乳類に適用しうる治療方法、およびその際に有用な医薬組成物ならびにそのための適切な包装を提供する。
【0061】
式(I)の化合物を使用すると、特に長期適用が必要とされる場合、実際には粘膜病変および特に胃潰瘍の進行を悪化させうる他のNSAID(特にその用途がより確立されているもの)よりも格段に有利である。式(I)の化合物がかかる粘膜病変および特に胃潰瘍の治療または予防に有用であるということは、驚くべきことである。
【0062】
最終的に粘膜の破壊が生じる疾病過程を抑制し、また逆行させる式(I)の化合物の能力は、特に長期抗炎症治療を要する哺乳類の安全で効果的な治療に大きな影響を与える。
【0063】
本明細書中で使用する場合、「哺乳類」という用語は、多数の異なる種類の哺乳類、好ましくはヒト、ネコ、イヌまたはウマを意味する。
【0064】
本発明によれば、治療を必要とする哺乳類の胃酸関連症状の治療または予防は、該哺乳類に、該症状を治療または予防するのに治療上有効な量の、1または2以上の式(I)の化合物を投与することを含む。
【0065】
前記の治療または予防は特に、何らかの胃酸関連症状、例えば胃腸粘膜および特に胃粘膜の傷害、損傷または病変を改善、軽減、有効に治療、逆行、または予防することを含む。「治療または予防」という表現を本発明の胃保護化合物の投与に関して本明細書中で使用する場合、投与の治療方針および該投与により実際に得られる治療結果の両方を指すものとする。先に述べたように、前記化合物の投与により達成される治療の程度は、疾患経過の改善から有意な軽減、さらには疾患の有効治療(疾患過程の逆行を含む)まで、多岐にわたる。
【0066】
胃酸関連症状の治療または予防は、1または2以上の式(I)の化合物に加えて、本質的に抗菌活性剤、別のプロトン阻害剤およびH2受容体アンタゴニストなどの別の胃保護物質、制酸剤、アルギン酸塩ならびに運動促進剤からなる群より選択される1以上のメンバーを投与することを含んでいてもよい。
【0067】
抗菌活性剤との併用は、H.ピロリ(H.pylori)陽性個体の治療[抗H.ピロリ(H.pylori)療法]において特に有用である。クラリスロマイシンおよびメトロニダゾールまたはアモキシシリンなどの抗菌活性剤をプロトンポンプ阻害剤と併用すると、H.ピロリ(H.pylori)感染に関して高い除菌率が得られる。記載しうる別の適切な抗菌活性剤は、β-ラクタム系抗生物質、例えばペニシリン類(ベンジルペニシリン、フェノキシメチルペニシリン、プロピシリン、アジジシリン、ジシオキサシリン、フルクロキサシリン、オキサシリン、アモキシシリン、バカンピシリン、アンピシリン、メジオシリン、ピペラシリンもしくはアジオシリンなど)、セファロスポリン類(セファドロキシル、セファクロール、セファレキシン、セファレキシム、セフロキシム、セファタメット、セファドロキシル、セフチブテン、セフポドキシム、セフォテタン、セファゾリン、セフォペラゾン、セフチゾキシム、セフタキシム、セフタジジム、セファマンドール、セフェピム、セフォキシチン、セフォジジム、セフスロジン、セフトリアキソン、セフォチアムもしくはセフメノキシムなど)または他のβ-ラクタム系抗生物質(例えば、アズトレオナム、ロラカルベフもしくはメロペネム);酵素阻害剤(例えば、スルバクタム)、テトラサイクリン類(例えば、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、ミノサイクリンもしくはドキシサイクリン)、アミノ配糖体(例えば、トブラマイシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、アミカシン、ネチルマイシン、パロモマイシンもしくはスペクチノマイシン);アンフェリコール類(例えば、クロラムフェニコールもしくはチアンフェニコール);リンコマイシン類およびマクロライド系抗生物質(例えば、クリンダマイシン、リンコマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、スピラマイシン、ロキシスロマイシンもしくはアジスロマイシン);ポリペプチド系抗生物質(例えば、コルスチン、ポリミキシンB、テイオプラニンもしくはバンコマイシン)、ジャイレース阻害剤(例えば、ノルフロキサシン、シノキサシン、シプロフロキサシン、ピペミド酸、エノキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン、フィエロキサシンもしくはオフロキサシン);ニトロイミダゾール類(例えば、メトロニダゾール);または他の抗生物質(例えば、ホスホマイシンもしくはフシジン酸)であり、これらの抗菌活性物質は、単独で投与するか、あるいは互いに組み合わせることができる。
【0068】
以下の化合物は、別のプロトンポンプ阻害剤として最初に挙げられる:オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾール、レミノプラゾール、ネパプラゾールおよびパントプラゾール。
【0069】
本発明の式(I)の化合物は、当業者には容易に理解され、かつ通常は本発明の治療薬が投与される状況に応じて決定される、他の治療上活性な成分と併用することもできる。こうした他の治療上活性な成分の例には、限定するものではないが、前記の薬剤が含まれる。
【0070】
前記の他の治療上活性な成分の別の例には、抗炎症薬、特にNSAIDおよびさらに別の種類の抗炎症薬が含まれ、またこれらの例には、例えば、H1-受容体アンタゴニスト;キニン-B1-およびB2-受容体アンタゴニスト;PGD-, PGF-, PGI2-,およびPGE-受容体アンタゴニストなどのプロスタグランジン阻害剤;トロンボキサンA2(TXA2-)阻害剤;PAF-受容体アンタゴニスト;種々の親水基を有するアウロチオ基形態の金;免疫抑制剤、例えば、シクロスポリン、アザチオプリン、およびメトトレキサート;抗炎症糖質コルチコイド、例えば、デキサメタゾン;広域駆虫抗生物質、例えば、アベルメクチンおよびミルベマイシン;ペニシラミン;ヒドロキシクロロキン;抗通風薬(例えば、コルヒチン)、キサンチンオキシダーゼ阻害剤(例えば、アロプリノール)、ならびに尿酸排泄促進薬(例えば、プロベネシド、スルフィンピラゾン、およびベンズブロマロン)が含まれる。
【0071】
本発明の特定の態様によれば、1または2以上の以上の式(I)の化合物を、潰瘍誘発性抗炎症薬と併用する。抗炎症薬は、それらがシクロオキシゲナーゼ、特にシクロオキシゲナーゼ1を阻害し、その結果としてある種のプロスタグランジン、特にプロスタグランジンE2が産生される場合に、潰瘍誘発性であるとする。NSAID群に属する潰瘍誘発性抗炎症薬は、好ましくは1または2以上の式(I)の化合物と併用する。記載しうる特定の潰瘍誘発性抗炎症薬は、アセチルサリチル酸(ASA)、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、フェナセチン、イブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ピロキシカム、テブフェロン、エトドラク、ナブメトン、テニダップ、アルコフェナク、アンチピリン、アミモピリン、ジピロン、アニモピロン、フェニルブタゾン、クロフェゾン、オキシフェンブタゾン、プレキサゾン、アパゾン、ベンジダミン、ブコローム、シンコフェン、クロニキシン、ジトラゾール、エピリゾール、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルフェナム酸、グラフェニン、インドプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、サリジファミド、スリンダク、スプロフェン、トルメチン、ナブメトン、チアラミド、プロクアゾン、ブフェキサマク、フルミゾール、チノリジン、チメガジン、ダプソン、ジフルニサル、ベノリレート、ホスホサル、フェンクロフェナク、エトドラク、フェンチアザク、チロミソール、カルプロフェン、フェンブフェン、オキサプロジン、チアプロフェン酸、ピルプロフェン、フェプラゾン、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム、セレコキシブ、テノキシカムである。特定の実施形態によれば、アセチルサリチル酸を1または2以上の式(I)の化合物と併用する。
【0072】
従って、このタイプの医薬品により、炎症状態を効果的に治療し、同時に胃の再建特性を有する手段が提供される。これは、潰瘍誘発性抗炎症薬の投与が胃腸管に影響を与える状況において(例えば、経口投与または胃腸管の炎症状態の場合に)特に都合が良い。
【0073】
本発明で用いられる投与計画によれば、式(I)の化合物を、規則正しいスケジュールに基づいて使用される他の投薬法と併用して投与することが含まれる。また、併用による投与は多くの異なる形をとることができ、それらも本発明の範囲に含まれることが想定される。たとえば、式(I)の化合物は、単純に、目的に合わせて組み合わされた1以上の他の治療薬と共に、併用されるすべての薬物を含む通常用いられる剤形、たとえば経口用錠剤に製剤される。製剤に熟練した当業者は、上記の薬物の異なる放出時間を有する制御放出製剤を作ることにより、異なる薬物の異なる半減期を調整して、比較的統一された投薬を達成することができる。剤形として用いられる薬剤入りの食料もまた、製剤の技術分野における公知の原理に従って調製することができ、併用される薬物は食物組成物の中に単純に混合されて存在する。本発明はまた、薬物の併用が、併用される薬物を同時に投与することにより達成される、共投与をも含む。このような共投与は異なる剤形および投与経路を用いるものであってもよい。本発明はさらに、併用される個々の薬物が哺乳類に同時に投与されなくても、関係する薬物の望まれる血漿レベルが治療される哺乳類において維持されるような、異なるが、規則正しく連続的な投与計画に従って上記の組み合わせを使用することも含む。上記の併用はすべて当業者が容易に考案し、投与することができるものである。
【0074】
式(I)の化合物を本発明の方法および組成物の活性成分として用いる場合、これらを標準的な医薬品の剤形に組み入れることができる。したがって、本発明はまた、製薬上許容される担体、および、プロトンポンプを阻害するのに有効な量の、上で定義した式(I)の化合物を含む医薬組成物に関する。たとえば、これらは、全身または局所投与、経口または非経口投与された場合に有用であり、この目的で、通常の医薬品添加物、希釈剤およびアジュバント、たとえば、水、ゼラチン、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油、ゴム、ポリアルキレングリコール等のような有機および無機不活性担体材料と組み合わされる。これらの製剤は固体の剤形、たとえば、錠剤、カプセルとして、および特に哺乳類にとって美味な食物と組み合わせた、または混合した形を採用することができる。あるいは、これらは液体の剤形、たとえば、溶液およびエリキシルとして投与することができる。加えることができる医薬品添加物およびアジュバントには、保存剤、抗酸化剤、抗菌剤および他の安定剤;湿潤剤、乳化剤、および懸濁剤、および固化防止化合物;香料および着色添加物;圧縮性を改善する組成物、または活性成分を遅効性、徐放性または制御放出とするための組成物;および医薬品の浸透圧を変えるため、またはバッファとして作用するためのさまざまな塩が含まれる。うまく使用できた具体的な剤形には、静脈内注射用のML3000の5%混合ミセル溶液、3%の美味なペースト、および経口錠剤が含まれる。
【0075】
治療上有効な量の、上で定義した式(I)の化合物は、上記の哺乳類に全身投与することができるが、この全身投与は、(1) 動脈内、皮内または経皮(皮下を含む)または脊髄内、特に鞘内、および最も一般的には筋内または静脈内送達、またはデポ製剤として送達するのに適した、水溶液、エマルションまたはサスペンションのような液体の剤形中に上記の化合物を含む医薬組成物の適当な身体組織または腔への注射または注入;(2) 固体の埋没物組成物として遅効性、徐放性、および/または制御放出送達するのに適した、たとえば、式(I)の胃保護化合物の固体の粒子が分散している、または液体の式(I)の胃保護化合物の小球または単離された小胞が閉じこめられている、生物適合性および生物侵蝕性の材料のマトリックスを含む固体の剤形に上記の化合物を含む医薬組成物の、適当な身体組織または腔への点滴;または(3)経皮送達、たとえば、経皮パッチまたは表皮下埋没物に適した、または、その経口送達に適した固体または液体の剤形中に上記の化合物を含む医薬組成物の摂取または投与を含む。
【0076】
多くの本明細書に記載された剤形を、上記の剤形からの活性成分の制御放出、遅効性、および/または徐放性を与えるように製剤化することができる。
【0077】
本発明によるML3000の有用な制御放出製剤は、5mg/kgの1回の経口投与の後に、1日中のほとんどの時間にわたって、100ng/mLよりも大きいML3000の血漿レベルを維持するものである。本発明によるML3000の好ましい経口制御放出製剤は、即効型製剤および制御放出製剤を同じ用量で投与した場合に、100ng/mLよりも大きい血漿ML3000濃度を、ML3000の即効型製剤が匹敵する血漿レベルを維持する時間よりも長い時間にわたって維持するようなものである。
【0078】
2.5および5mg/kgの用量を含む即効型ML3000製剤は、血漿ML3000濃度を8時間にわたって、それぞれ100および200ng/mL以上に維持する。
【0079】
全身投与のための好ましい経口製剤は、固体、たとえば、早く溶ける美味なウエハースのような美味な経口組成物、錠剤、カプセル、カプレット等、および液体、たとえば、溶液、サスペンション、エマルション等である。哺乳類への経口投与に特に適したタイプの医薬組成物は、治療される哺乳類の舌の裏側に送達するための経口ペースト、哺乳類の食物に混入して送達される顆粒の剤形、および噛みながら活性成分を消費する噛むことのできる剤形、または、噛んでいる物体から滲出することにより、治療される哺乳類による咀嚼の間に消費されない活性成分を送達することができる噛むことができる剤形が用いられ、含まれるが、これらに限定されない。
【0080】
上記の治療上有効な量の、定義された式(I)の化合物はまた、上記の哺乳類に局所投与することができ、この場合、上記の局所投与は、(1) 上記の式(I)の化合物の下記の局所部位への遅効性放出、制御放出、および/または徐放性を与える成分を含む送達に適した;または上記の組成物が上記の化合物を貯蔵し、その後、遅効性、徐放性および/または制御放出するような、それらの送達のためのデポ製剤としての提供に適した液体の剤形の上記の式(I)の化合物を含む医薬組成物の、胃酸関連症状の局所部位への注射または注入、;(2) 上記の組成物が必要に応じて上記の化合物の上記の局所部位への遅効性、徐放性および/または制御放出を与えるような、送達のための固体の埋設物としての提供に適した固体の剤形に上記の化合物を含む医薬組成物の点滴を含む。
【0081】
式(I)の胃保護化合物を含む医薬組成物が遅効性、制御放出、または徐放性製剤である場合にも、上記医薬組成物の注射が行われる。上記の組成物のこれらの製剤は、浸食されるマトリックスまたは一連のコーティングが、あらかじめ決定された速度または必要ならば変化する速度で式(I)の化合物を連続的に放出することを可能にするために用いられる、固体、半固体、ゲル、または他の液体/固体の組み合わせである。「持続放出」および「長時間作用型」ならびに他の用語は、これらの製剤を表すために用いられる。これらはすべて、マトリックス内に含まれる式(I)の化合物の遅い、および/または均一な調剤を得るために、さまざまな組み合わせの生物により浸食されるポリマー、たとえば、さまざまなセルロース系ポリマー、および天然材料、たとえば、コーンスターチおよびステアリン酸マグネシウムを用いる。
【0082】
胃酸関連疾患を治療または予防するために治療上有効な量の式(I)の化合物は、治療される哺乳類に、1日あたり、上記哺乳類の体重キログラムあたりのミリグラムで表される量:“mg/kg/日”で投与される。本明細書において用いられる「1日あたり」という表現は、必ずしも、すべての個々の製剤を治療される哺乳類に毎日投与する必要があることを意味しない。「1日あたり」という表現は、単に投与される胃保護化合物の用量を測る総合的な単位の一部として用いられる最小で便利な、しかし任意の時間の区分の指示に過ぎない。用量、すなわち、胃酸関連疾患を治療または予防するための式(I)の化合物の治療上有効な量は、通常、約0.1mg/kg/日から約20.0mg/kg/日、好ましくは約0.1mg/kg/日から約12.0mg/kg/日、より好ましくは約0.5mg/kg/日から約10.0mg/kg/日、最も好ましくは、約0.5mg/kg/日から約8.0mg/kg/日の範囲である。ML3000の典型的な剤形および量は、体重の2.5〜5.0mg/kg/日の用量でのML3000の経口投与を含む。Zollinger-Ellison症候群を有する患者には、例えば平均的な患者よりも高用量が必要であるといった特別な要件が必要となりうる。
【0083】
当業者は、好ましい投与経路およびそれに対応する剤形および量を決定するのみでなく、薬物投与計画、すなわち、投与の頻度をも決定しなければならない。一般的に、1日1回(s.i.d.)投与および1日2回(b.i.d.)投与の間で選択されるのが最も好ましい。前者はより迅速で深い治療を提供し、後者はあまり深くないがより持続する治療を提供する。けれども、この一般化は、関与する特定のタイプの胃酸関連疾患、関与する特定の治療薬およびその薬物動態学、ならびに関与する特定の患者(哺乳類)のような重要な変化要素を考慮していない。市場に認可される製品のために、この情報の多くは、そのような認可を得るために実施された臨床研究の結果により既に提供されている。別の場合には、そのような情報は当業者の知識および技術を考慮した現在の明細書に含まれる教唆および指針に従って容易な方法で得ることができる。得られた結果はまた、同じアッセイにおける認可された製品の相当する評価から得られたデータと相互に関連することができる。
【0084】
本発明によれば、適当な外側のカートンおよびその中に取り出し可能に入れられた内側の容器;上記の容器に入れられた適当な剤形の上記の式(I)の化合物;および、上記のカートンまたは上記のカートンに入った上記の容器に添付した、または上記のカートンまたは容器の一部に表示された、指示および情報の印刷物であって、この指示および情報は、その読者に理解できる言語で、上記の活性成分が、胃酸関連疾患の状態にある哺乳類に投与された場合、胃腸粘膜の傷害、損傷または病変を緩和、減少、有効に治療、反転または予防するであろうと述べるものであるもの、を含む、治療を必要とする哺乳類の胃酸関連疾患を治療または予防するための、商業的な使用に適したパッケージもまた提供される。好ましい実施形態において、上記のカートンおよび容器を含む上記のパッケージは、特に上記の指示および情報の印刷物を含めて、動物の治療のための薬物の販売および使用に関するすべての法令による要求に適合する。
【0085】
本発明によれば、上記の適当な容器;上記の容器に入れられた式(I)の化合物の経口投与用の製剤;および上記の容器に添えられた上記の指示および情報の印刷物を含む、前段落に記載したタイプのパッケージが提供される。
【0086】
本発明の方法は、さらに2つの基本的な段階:(I) 候補の哺乳類の状態が、現在または将来に、胃酸関連疾患の状態にあることを確証することにより、上記の哺乳類が上記の治療を必要としていることを確かめ;その上で、(II) 上記の哺乳類に、式(I)の胃保護化合物を、上記の胃酸関連疾患を治療または予防するのに治療上有効な量で投与することにより上記の状態を治療または予防することを含むものと規定される。段階(II)のさまざまな態様はすでに上で詳細に検討した。そこで、ここでは段階(I)の態様を詳細に検討する。
【0087】
診断に関する限り、本発明の治療の候補である哺乳類の状態を、この哺乳類が現在または将来、胃酸関連疾患の状態にあるか否かを確証することは目的にかなっている。本明細書において使用される「現在または将来」という表現は、下記の決定を行う方法によって、候補の哺乳類が現在上記の治療を必要としているか、または、近い未来において上記の治療を必要とする可能性が非常に高いもしくは必要とすることが予想されるかのいずれかであると同定することができることを意味する。治療の将来的な必要性は、当業者の経験から、胃酸関連疾患の状態に直接つながる陽性の因子の決定により確証される。たとえば、当業者は、臨床検査から哺乳類が胃酸関連疾患を有することを確証し、この結論を、近い未来にその哺乳類が胃酸関連疾患を発症するであろうことを確立された測定方法により決定することができるさらなる証拠により確認する。
【0088】
現在または将来に前記胃酸関連症状の状況にあり、そのため前記治療を必要としている前記哺乳類の状態は、具体的には、例えば光ファイバー内視鏡検査、磁気共鳴画像法(MRI)およびX線法(バリウムX線二重造影法など)を含む非侵襲的な手順により、候補哺乳類の胃腸管を臨床検査および評価して得られる陽性の結果から判断する。他の臨床的な症候および徴候には、候補哺乳類の胃粘膜を、例えば生検により直接検査して得られるものが含まれる。
【0089】
好適な実施形態の説明
本発明の方法および組成物をさらに説明するため、該方法を実施する際に使用しうる典型的な手順の具体的な記載例を以下の段落中に示す。しかし、これらの例は単に例示を目的としたものであって、本発明を多少なりとも限定するものと考えるべきではない。かかる目的のために、本発明の特許請求の範囲を本明細書に添付してある。
【実施例】
【0090】
実施例1
胃ミクロソームの、K+-刺激を受けた、SCH28080感受性H,K-ATPアーゼ活性に対するML3000の効果
方法:ミクロソーム胃H,K-ATPアーゼは、ブタ胃粘膜のホモジェネートを分画遠心分離することにより調製した。簡単に言うと、屠殺場で得られた死後1時間以内のブタの胃を、氷冷した0.25 Mショ糖で洗浄し、胃底を噴門領域および洞領域から切り離した。以後の手順は全て4℃で行った。粘膜に大量の飽和NaClを注ぎ、表面粘液および表在性細胞をペーパータオルで拭き取った。粘膜をその下にある結合組織からこすり取り、分離用バッファ(0.25 Mショ糖、20 mM HEPES、pH 7.4、1 mM EDTA、1 mM フッ化フェニルメチルスルホニル)中に懸濁し(10%w/v)、さらにTissumizer(Tekmer, Cincinnati, OH)中最大出力で2回、10秒ずつバースト波を当てることにより破壊した。ホモジェネートを20,000 gで30分間遠心分離し、さらに上清を105 gで1時間遠心分離した。得られたミクロソームのペレットを分離用バッファ中に再懸濁し、7%w/vフィコールおよび34%ショ糖(いずれも分離用バッファ中に存在する)からなる不連続勾配に付した。32,500rpm(Sorvall AH 629ローター)で3時間後、7%フィコール界面から回収したミクロソームのバンド(G1)を、15 mM PIPES-Tris, pH 6.8中に再懸濁して10 mg/mLとし、60%冷ショ糖で1:1に希釈し、凍結乾燥して各0.5 mLのアリコートとし、これを-70℃で保存した。G1のミクロソームは直径が約0.1ミクロンであって、H.K.-ATPアーゼ活性が高く、そのタンパク質含量の80%以上はSDS-PAGEにより94 kDaの位置にバンドとなって現れた。ミクロソームのATP加水分解活性は、基質ATPからの無機リン酸の放出として定量化し、これを段階的な濃度(10-9 M〜10-4 M)のML3000および他の多様な化合物について測定した。ブタの胃ミクロソーム膜におけるK+刺激を受けたATPアーゼ活性のアッセイ用反応混合物には、5μgの膜タンパク質、100 mM Tris-酢酸、pH 7.0、1 mM MgCl2、1 mM NaNa、0.1 mM EGTA、5μM ATP(γ-32P-ATP, 10 Ci/mmol, NEN, Boston, MA)、0〜10 mM KCl、および0〜100μM SCH28080が含まれていた。37℃で20分間インキュベートした後、10%w/vの活性炭(Sigma)、5.5%w/vのトリクロロ酢酸を加えることにより反応を停止し、激しくボルテックスし、さらに14,000 gで10分間、4℃にて遠心分離した。上清の無機リン酸(γ-32Pi)含量を、シンチレーションカウンタで測定した。具体的なH,K-ATPアーゼ活性は、特異的な胃H,K-ATPアーゼ阻害剤であるSCH28080の存在下と不在下におけるミクロソームATPアーゼ活性の差として算出し、ミリモルPi/mgタンパク質/hrで表した。データの図描は、H,K-ATPアーゼ活性の阻害%を化合物濃度の関数として示したものである。標準誤差バーのあるグラフは、3回の独立したアッセイ(各アッセイにおいて、3回の別個ではあるが同一の反応条件におけるATPアーゼ活性を測定した)におけるアッセイ間のデータの分散を示す。標準誤差バーの無いグラフは、少なくとも3回の独立したアッセイのうちの1回における、3回の別個ではあるが同一の反応条件における平均ATPアーゼ活性を表す。これらの場合の典型的なデータを示す。
【0091】
結果:胃H,K-ATPアーゼ活性はML3000により用量依存的に阻害され、その際の半最大阻害濃度(IC50)は15μMであった(図1)。ML3000の阻害活性を、古典的プロトンポンプ阻害剤(PPI)、すなわち置換ベンズイミダゾールであるオメプラゾールの活性と比較した。図2は、図1のものと同一のアッセイ条件下のH,K-ATPアーゼ活性に対するオメプラゾールの効果を示す。オメプラゾールの推定IC50は1μMであった。これらのデータは、ML3000およびオメプラゾールが、少なくとも指定された条件下にある特定のin vitroアッセイの場合には、胃H,K-ATPアーゼ活性に関して同程度のIC50を呈することを示している。胃のプロトンポンプ活性に関して公表されているオメプラゾールのIC50は、アッセイの条件に応じて470 nM〜36μMの値をとる(3,4,5)。他のPPIの場合、ピコプラゾールのIC50は2μM(6)、ラベプラゾールのIC50は72 nM(3)、およびランソプラゾールのIC50は2.1μM(7)である。
【0092】
ミクロソームH,K-ATPアーゼについて公表されているPPIの幅広いIC50値は、化合物を酸性化してチオール反応性スルホキシド中間体を形成し、次に該中間体がH,K-ATPアーゼのサブユニットであるシステイン残基を不可逆的に誘導体化して酵素を阻害することの、機構的必要性を反映している。オメプラゾールは、中性またはそれ以上のpHでは胃H,K-ATPアーゼに対する阻害効果を発揮しない。ミクロソーム小胞調製物はそのイオン密度(ion-tightness)のばらつきが大きく、これがH,K-ATPアーゼ代謝回転により内部pHを下げうるその程度、ひいては該小胞内に拡散しているオメプラゾールを酸性化および活性化しうるその程度に影響を及ぼす。あるいは、オメプラゾールを先にin vitroで酸性化することによりその阻害特性を確実に誘導するが、これはイオン透過性のミクロソームH,K-ATPアーゼ調製物を用いて実施するアッセイに不可欠である。従って、図2に示すオメプラゾールの阻害データは、酸性化してpH6.1とし、さらに同pHで酵素と共に30分間インキュベートしたオメプラゾールから得たものである(8)。
【0093】
ML3000が同程度の酸活性化特性を示すかどうかを決定するため、ML3000の半最大阻害濃度を種々のpHについて滴定し、H,K-ATPアーゼ活性に対する効果を測定した。図3に示すように、ML3000の酸性化は、そのH,K-ATPアーゼ阻害プロフィールに対して有意な効果を示さなかった。これらのデータは、ML3000およびオメプラゾールはH,K-ATPアーゼに対して同程度のIC50を有するものの、ML3000はオメプラゾールと違って阻害活性の誘導に酸性化を必要としない、ということを示唆している。
【0094】
PPIがH,K-ATPアーゼ活性(触媒α-サブユニットへの共有結合)の不可逆的阻害剤であると仮定して、H,K-ATPアーゼのML3000による阻害が可逆的であるか、または不可逆的であるかを決定した。胃H,K-ATPアーゼに富むミクロソームを最大阻害濃度のML3000で処理し、次いで過剰なバッファで希釈することにより、ML3000の濃度を100μMから3.3μMへと下げた。図4に示す結果は、ML3000の希釈によりH,K-ATPアーゼ活性が復活したことを示唆しており、これはML3000が可逆的様式でH,K-ATPアーゼ活性を阻害すること、すなわちML3000は胃H,K-ATPアーゼのいずれのサブユニットもin vitroで共有結合により誘導体化することはない、ということと一致している。
【0095】
アラキドン酸およびプロスタグランジンE2(PGE2)もH,K-ATPアーゼ活性を用量依存的に阻害し、そのIC50はそれぞれ30μMおよび45μMであった(図5および6)。PGE2のデータは、ブタの胃H,K-ATPアーゼに対するPGE2の阻害効果は見出されないという以前の研究(9)と矛盾する。その研究で使用された具体的なATPアーゼアッセイにおける相違が、この矛盾の主な原因であろう。ML3000およびアラキドン酸はアニオン両親媒性物質なので、その阻害効果は、H,K-ATPアーゼのサブユニット結合部位との特異的な相互作用、またはH,K-ATPアーゼ関連ミクロソーム膜脂質とのより特異性の低い疎水的相互作用、またはこれら両要素の組み合わせの結果として生じうる。
【0096】
ML3000は5-リポキシゲナーゼ阻害も示すことから、ミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対する2種のリポキシゲナーゼ阻害剤の効果について調べた。図7は、2-(1-チエニル)エチル3,4-ジヒドロキシベンジリデンシアノアセテート(TEDBC)(5-, 12-,および15-リポキシゲナーゼの強力な阻害剤)がミクロソームH,K-ATPアーゼ活性を阻害し、その際のIC50 は3.3μMであったことを示している。対照的に、5-リポキシゲナーゼ特異的阻害剤である6-((3-フルオロ-5-(メトキシ-3,4,5,6-テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)フェノキシ)メチル)キノリン(ZD-2138)のH,K-ATPアーゼ活性に対する効果は最も小さかった(10-5 Mで約20%の阻害)(図8)。これらのデータは、胃ミクロソーム12-および15-リポキシゲナーゼがH,K-ATPアーゼの活性化に関与していること、またはTEDBCとH,K-ATPアーゼサブユニットが直接相互作用することにより酵素の高次構造、ひいては活性を変更していること、と一致する。
【0097】
ML3000のH,K-ATPアーゼ阻害効果を他のNSAIDと比較するため、プロトンポンプ活性に対するアセチルサリチル酸、ナプロキセン、インドメタシンおよび選択的COX-2阻害剤であるNS398の効果を測定した。4種のNSAIDはいずれも、10-4 M(アセチルサリチル酸の場合は10-3 M)以下の濃度ではミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対する阻害効果を示さなかった(図9, 10, 11および12)。インドメタシンは幾らか高い濃度で胃H,K-ATPアーゼを阻害する(Ki=0.67×10-3 M)ことが以前に報告されていた(10)。このデータから、胃H,K-ATPアーゼ活性に対する阻害効果という点で、ML3000と他のNSAIDとがはっきりと区別される。
【0098】
胃H,K-ATPアーゼのML3000による阻害が、ブタの胃ミクロソーム中に存在する推定上の機能的ロイコトリエン代謝経路に対するこの化合物の効果を反映するものかどうかを証明するために、H,K-ATPアーゼ活性に対するロイコトリエンB4およびD4の効果を調べた。溶解度の問題から、1μMより高い濃度のLTB4およびLTD4について調べることはできなかった。図13および14に示すように、いずれのロイコトリエンも生理的濃度(10-9〜10-8 M)ではH,K-ATPアーゼに対する阻害活性を示さず、10-7 Mより高い非生理的濃度でのみ、H,K-ATPアーゼ活性の幾らか有意な減衰がみられた。
【0099】
実施例2
胃壁細胞のヒスタミンで刺激した酸蓄積に対するML3000および他の化合物の効果
方法:胃壁細胞は、底粘膜をプロナーゼ/コラゲナーゼ消化し、それ自体は公知のやり方で不連続Nycodenz密度勾配で細胞を濃縮することにより、ニュージーランド・白ウサギから単離した。壁細胞内へのアミノピリンの蓄積は、Duraporeメンブレンを備えた96ウェルフィルタープレート中で評価した。簡単に言うと、細胞を[C14]-アミノピリンと共にプレインキュベートし、次いで100,000個の細胞/200μL/ウェルを試験化合物抜きで、または試験化合物と共に15分間インキュベートし、その後100μMのヒスタミンの不在下または存在下でさらに30分間インキュベートした。全ての測定を4回ずつ行った。基準とするアミノピリンの蓄積は、KSCN存在時の蓄積(非特異的同位体の捕捉を反映している)から未処理細胞内へのアミノピリン蓄積を差し引いたものとして測定した。データの図描は、細胞によるヒスタミンで刺激した酸蓄積を、化合物濃度の関数として示したものである。
【0100】
結果:ML3000は、ウサギ胃壁細胞によるヒスタミンで刺激した酸蓄積を用量依存的に阻害し、その際の半最大阻害濃度(IC50)は40μMであった(図15)。また、ML3000はウサギ胃壁細胞によるフォルスコリンで刺激した酸蓄積も用量依存的に阻害し、その際の半最大阻害濃度(IC50)は約45μMであった(図16)。これらのデータは、ML3000が、ヒスタミンH2受容体の活性化により誘導されるcAMP動員の下流にある胃壁細胞酸分泌機構に影響を及ぼすことを示唆している。該データは、胃壁細胞酸分泌のML3000による阻害が、ML3000と胃H,K-ATPアーゼとの直接的な相互作用の結果生じるということと一致する。しかし、ミクロソーム小胞内のML3000のIC50(15μM)と単離された壁細胞内のML3000のIC50 (40〜45μM)との間のずれは、壁細胞の細胞内H,K-ATPアーゼ区画へのML3000のアクセスが、形質膜の透過制限により遅くなりうることを示している。
【0101】
また、ミクロソームH,K-ATPアーゼを用いて見出されたように、アセチルサリチル酸、ナプロキセン、およびNS398などの他のNSAID(濃度は10-4 M以下とする)は、単離されたウサギ壁細胞による酸の蓄積に対する効果を示さなかった。
【0102】
実施例3
ヒト胃腺癌(AGS)細胞におけるIL-1βで誘導したIL-8分泌およびヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)で誘導したIL-8分泌に対するML3000の効果
方法:AGS細胞を試験化合物と共にインキュベートし、IL-1βでチャレンジし、その後の培養培地へのIL-8分泌を酵素免疫測定法により測定した。データの図描は、刺激していないIL-8分泌または刺激したIL-8分泌の阻害%を、化合物濃度の関数として示したものである。
【0103】
結果:IL-1βによる刺激が無く、またML3000もしくはZD2138が存在しない場合、AGS細胞(μLの培養培地中に5×104個)は6時間にわたって約225 pg/mLの濃度のIL-8を分泌した(図17および19)。IL-1β(20 ng/mL)で刺激すると、AGS細胞の6時間にわたるIL-8分泌量は約27倍増加し、濃度は約6000 pg/mLとなった(図18および20)。ML3000は、基準IL-8分泌(図17)およびIL-1βで刺激したIL-8分泌(図18)の両方を阻害し、その際のIC50はそれぞれ0.75μMおよび30μMであった。
【0104】
ミクロソームH+,K+-ATPアーゼ活性に対する効果を示さなかった5-リポキシゲナーゼ特異的阻害剤(ZD-2138)は、AGS細胞による基準IL-8分泌の用量依存的な阻害を示し(図19)、その際のIC50は約0.4μMであった。対照的に、ZD-2138は、AGS細胞によるIL-1βで刺激したIL-8分泌に対する効果を示さなかった(図20)。上記で実証されたML3000によるH+,K+-ATPアーゼの阻害は、このモデルのIL-8分泌阻害の前提とはならない。何故なら、AGS細胞はH+,K+-ATPアーゼを発現しないからである。
【0105】
IL-8が胃粘膜における有力な炎症仲介物質である限り、ML3000が胃上皮細胞において基準IL-8分泌およびIL-1βで刺激したIL-8分泌を大いに阻害するという知見は、この阻害がML3000の5-リポキシゲナーゼ阻害活性による影響を受けないことを意味している。
【0106】
参考文献


【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】ブタのミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対するML3000の効果。
【図2】ブタのミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対するオメプラゾールの効果。
【図3】胃H,K-ATPアーゼのML3000による阻害に対するpHの効果。
【図4】胃H,K-ATPアーゼの阻害に対するML3000の希釈の効果。
【図5】ブタのミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対するアラキドン酸の効果。
【図6】ブタのミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対するPEG2の効果。
【図7】ブタのミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対するTEDBCの効果。
【図8】ブタのミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対するZD-2138の効果。
【図9】ブタのミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対するアセチルサリチル酸の効果。
【図10】ブタのミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対するNS398の効果。
【図11】ブタのミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対するナプロキセンの効果。
【図12】ブタのミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対するインドメタシンの効果。
【図13】ブタのミクロソームH,K-ATPアーゼ活性に対するロイコトリエンB4の効果。
【図14】胃H,K-ATPアーゼに対するロイコトリエンD4の効果。
【図15】ウサギ胃腺におけるヒスタミンで刺激した酸性化に対するML3000の効果。
【図16】ウサギ胃腺におけるフォルスコリンで刺激した酸性化に対するML3000の効果。
【図17】ヒト胃上皮細胞による基準IL-8分泌に対するML3000の効果。
【図18】IL-1βで刺激したヒト胃上皮細胞によるIL-8分泌に対するML3000の効果。
【図19】ヒト胃上皮細胞による基準IL-8分泌に対するZD2138の効果。
【図20】IL-1βで刺激したヒト胃上皮細胞によるIL-8分泌に対するZD2138の効果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の式(I)
【化1】

[式中、
Xは、CR8R9、S、O、NR12またはC(O)を表し;
Aは、CR10R11、またはXとラジカルR6およびR7が結合した原子との間の結合を表し;
ラジカルR1、R2、R3の第1は、
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲノアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、N-アルキルスルファモイル、N,N-ジアルキルスルファモイル、アルキルスルホンアミドおよびアルキルスルホン-N-アルキルアミドからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよいアリール;または、
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲノアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、N-アルキルスルファモイル、N,N-ジアルキルスルファモイル、アルキルスルホンアミドおよびアルキルスルホン-N-アルキルアミドからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよい、N、OおよびSから独立に選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する、芳香族または非芳香族の、単環式または二環式の、ベンゾ付加していてもよい複素環基
を表し;
ラジカルR1、R2、R3の第2は、
ハロゲン、シクロアルキル、アルコキシ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシおよびトリフルオロメチルからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよいアルキル;
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロゲノアルコキシおよびヒドロキシからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよいシクロアルキル;
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲノアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、N-アルキルスルファモイル、N,N-ジアルキルスルファモイル、アルキルスルホンアミドおよびアルキルスルホン-N-アルキルアミドからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよいアリール;または、
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲノアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、N-アルキルスルファモイル、N,N-ジアルキルスルファモイル、アルキルスルホンアミドおよびアルキルスルホン-N-アルキルアミドからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよい、N、OおよびSから独立に選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する、芳香族または非芳香族の、単環式または二環式の、ベンゾ付加していてもよい複素環基
を表し;
ラジカルR1、R2、R3の第3は、H、アルキル、ハロゲノアルキル、ヒドロキシアルキル、-CHO、-COOH、ハロゲン、シアノ、アルキルスルホニル、スルファモイルまたはB-Yを表し、ここで、
Bは、ヒドロキシまたはアルコキシにより置換されていてもよいアルキレンまたはアルケニレンを表し;
Yは、-COOH、SO3H、OPO(OH)2、OP(OH)2、-CHOまたはテトラゾリルを表すか;あるいは、
ラジカルR1、R2、R3の第2および第3は、これらが結合している原子と共に、飽和または不飽和シクロアルキルを表し;
R4-R11は、同一であっても異なっていてもよく、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、COOHまたはアシルオキシを表し、隣接するラジカルの場合は結合を表してもよく、またジェミナルなラジカルはそれらが結合するC原子と共にカルボニルまたはシクロアルキルを表してもよく;
R12は、水素、アルキルまたはフェニルを表す]
の化合物、およびその光学異性体、生理的に許容される塩および誘導体の、胃プロトンポンプを阻害するための医薬組成物の製造における使用。
【請求項2】
ラジカルR1、R2、R3の第1および第2が独立に、置換されていてもよいアリールまたは芳香族複素環残基を表す、請求項1記載の使用。
【請求項3】
ラジカルR1、R2、R3の第3が、COOHまたはB-Y
[ここで、YはCOOH、およびBはアルキレンを表す]
を表す、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
上記の式(I)の化合物が、(Ia)
【化2】

の[6-(4-クロロフェニル)-2,2-ジメチル-7-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ピロリジン-5-イル]-酢酸、その生理的に許容される塩または生理的に加水分解されるエステルである、請求項1記載の使用。
【請求項5】
上記の胃プロトンポンプが、胃H+,K+-ATPアーゼである、請求項1記載の使用。
【請求項6】
胃酸分泌を阻害するための、請求項1記載の使用。
【請求項7】
治療を必要とする哺乳類において胃粘膜の局所傷害に対する感受性を低下させるための医薬組成物を調製するための、1または2以上の、請求項1〜4のいずれか1項で規定された式(I)の化合物の使用。
【請求項8】
上記の局所傷害が、刺激原により引き起こされるものである、請求項7記載の使用。
【請求項9】
上記の刺激原が、本質的にNSAIDおよびCOX阻害剤からなる群より選択される、請求項8記載の使用。
【請求項10】
胃酸関連症状を治療または予防するための医薬組成物を調製するための、1または2以上の、請求項1〜4のいずれか1項で規定された式(I)の化合物の使用。
【請求項11】
胃粘膜の病変を治療または予防するための、請求項10記載の使用。
【請求項12】
びらん性胃炎を治療または予防するための、請求項10記載の使用。
【請求項13】
非びらん性胃炎を治療または予防するための、請求項10記載の使用。
【請求項14】
胃潰瘍形成を治療または予防するための、請求項10記載の使用。
【請求項15】
十二指腸潰瘍または胃潰瘍を治療または予防するための、請求項10記載の使用。
【請求項16】
1または2以上の式(I)の化合物に加えて、本質的に、抗菌活性剤、別のプロトン阻害剤およびH2受容体アンタゴニストなどの別の胃保護物質、制酸剤、アルギン酸塩ならびに運動促進剤からなる群より選択される1以上のメンバーを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
(i)1または2以上の、請求項1〜4のいずれか1項で規定された式(I)の化合物と、(ii)治療に使用するための1または2以上の潰瘍誘発性抗炎症薬、との併用。
【請求項18】
上記の潰瘍誘発性抗炎症薬が、アセチルサリチル酸(ASA)、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、フェナセチン、イブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ピロキシカム、テブフェロン、エトドラク、ナブメトン、テニダップ、アルコフェナク、アンチピリン、アミモピリン、ジピロン、アニモピロン、フェニルブタゾン、クロフェゾン、オキシフェンブタゾン、プレキサゾン、アパゾン、ベンジダミン、ブコローム、シンコフェン、クロニキシン、ジトラゾール、エピリゾール、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルフェナム酸、グラフェニン、インドプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、サリジファミド、スリンダク、スプロフェン、トルメチン、ナブメトン、チアラミド、プロクアゾン、ブフェキサマク、フルミゾール、チノリジン、チメガジン、ダプソン、ジフルニサル、ベノリレート、ホスホサル、フェンクロフェナク、エトドラク、フェンチアザク、チロミソール、カルプロフェン、フェンブフェン、オキサプロジン、チアプロフェン酸、ピルプロフェン、フェプラゾン、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム、セレコキシブ、テノキシカムからなる群より選択される、請求項17記載の併用。
【請求項19】
(i) 1または2以上の、請求項1〜4のいずれか1項で規定された式(I)の化合物、(ii)治療に使用するための1または2以上の潰瘍誘発性抗炎症薬、および任意で(iii)製薬上許容される担体、を含む医薬組成物。
【請求項20】
上記の潰瘍誘発性抗炎症薬が、アセチルサリチル酸(ASA)、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、フェナセチン、イブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ピロキシカム、テブフェロン、エトドラク、ナブメトン、テニダップ、アルコフェナク、アンチピリン、アミモピリン、ジピロン、アニモピロン、フェニルブタゾン、クロフェゾン、オキシフェンブタゾン、プレキサゾン、アパゾン、ベンジダミン、ブコローム、シンコフェン、クロニキシン、ジトラゾール、エピリゾール、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルフェナム酸、グラフェニン、インドプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、サリジファミド、スリンダク、スプロフェン、トルメチン、ナブメトン、チアラミド、プロクアゾン、ブフェキサマク、フルミゾール、チノリジン、チメガジン、ダプソン、ジフルニサル、ベノリレート、ホスホサル、フェンクロフェナク、エトドラク、フェンチアザク、チロミソール、カルプロフェン、フェンブフェン、オキサプロジン、チアプロフェン酸、ピルプロフェン、フェプラゾン、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム、セレコキシブ、テノキシカムからなる群より選択される、請求項19記載の組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の式(I)
【化1】

[式中、
Xは、CR8R9、S、O、NR12またはC(O)を表し;
Aは、CR10R11、またはXとラジカルR6およびR7が結合した原子との間の結合を表し;
ラジカルR1、R2、R3の第1は、
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲノアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、N-アルキルスルファモイル、N,N-ジアルキルスルファモイル、アルキルスルホンアミドおよびアルキルスルホン-N-アルキルアミドからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよいアリール;または、
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲノアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、N-アルキルスルファモイル、N,N-ジアルキルスルファモイル、アルキルスルホンアミドおよびアルキルスルホン-N-アルキルアミドからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよい、N、OおよびSから独立に選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する、芳香族または非芳香族の、単環式または二環式の、ベンゾ付加していてもよい複素環基
を表し;
ラジカルR1、R2、R3の第2は、
ハロゲン、シクロアルキル、アルコキシ、トリフルオロメトキシ、ヒドロキシおよびトリフルオロメチルからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよいアルキル;
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロゲノアルコキシおよびヒドロキシからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよいシクロアルキル;
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲノアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、N-アルキルスルファモイル、N,N-ジアルキルスルファモイル、アルキルスルホンアミドおよびアルキルスルホン-N-アルキルアミドからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよいアリール;または、
ハロゲン、アルキル、ハロゲノアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、ハロゲノアルコキシ、アルキルチオ、ヒドロキシ、ニトロ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルファモイル、N-アルキルスルファモイル、N,N-ジアルキルスルファモイル、アルキルスルホンアミドおよびアルキルスルホン-N-アルキルアミドからなる群より独立に選択される1以上の置換基により置換されていてもよい、N、OおよびSから独立に選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する、芳香族または非芳香族の、単環式または二環式の、ベンゾ付加していてもよい複素環基
を表し;
ラジカルR1、R2、R3の第3は、H、アルキル、ハロゲノアルキル、ヒドロキシアルキル、-CHO、-COOH、ハロゲン、シアノ、アルキルスルホニル、スルファモイルまたはB-Yを表し、ここで、
Bは、ヒドロキシまたはアルコキシにより置換されていてもよいアルキレンまたはアルケニレンを表し;
Yは、-COOH、SO3H、OPO(OH)2、OP(OH)2、-CHOまたはテトラゾリルを表すか;あるいは、
ラジカルR1、R2、R3の第2および第3は、これらが結合している原子と共に、飽和または不飽和シクロアルキルを表し;
R4-R11は、同一であっても異なっていてもよく、水素、アルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、ヒドロキシ、COOHまたはアシルオキシを表し、隣接するラジカルの場合は結合を表してもよく、またジェミナルなラジカルはそれらが結合するC原子と共にカルボニルまたはシクロアルキルを表してもよく;
R12は、水素、アルキルまたはフェニルを表す]
の化合物、およびその光学異性体、生理的に許容される塩および誘導体の、胃プロトンポンプを阻害するための医薬組成物の製造における使用。
【請求項2】
ラジカルR1、R2、R3の第1および第2が独立に、置換されていてもよいアリールまたは芳香族複素環残基を表す、請求項1記載の使用。
【請求項3】
ラジカルR1、R2、R3の第3が、COOHまたはB-Y
[ここで、YはCOOH、およびBはアルキレンを表す]
を表す、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
上記の式(I)の化合物が、(Ia)
【化2】

の[6-(4-クロロフェニル)-2,2-ジメチル-7-フェニル-2,3-ジヒドロ-1H-ピロリジン-5-イル]-酢酸、その生理的に許容される塩または生理的に加水分解されるエステルである、請求項1記載の使用。
【請求項5】
上記の胃プロトンポンプが、胃H+,K+-ATPアーゼである、請求項1記載の使用。
【請求項6】
胃酸分泌を阻害するための、請求項1記載の使用。
【請求項7】
治療を必要とする哺乳類において胃粘膜の局所傷害に対する感受性を低下させるための医薬組成物を調製するための、1または2以上の、請求項1〜4のいずれか1項で規定された式(I)の化合物の使用。
【請求項8】
上記の局所傷害が、刺激原により引き起こされるものである、請求項7記載の使用。
【請求項9】
上記の刺激原が、本質的にNSAIDおよびCOX阻害剤からなる群より選択される、請求項8記載の使用。
【請求項10】
胃酸関連症状を治療または予防するための医薬組成物を調製するための、1または2以上の、請求項1〜4のいずれか1項で規定された式(I)の化合物の使用。
【請求項11】
胃粘膜の病変を治療または予防するための、請求項10記載の使用。
【請求項12】
びらん性胃炎を治療または予防するための、請求項10記載の使用。
【請求項13】
非びらん性胃炎を治療または予防するための、請求項10記載の使用。
【請求項14】
胃潰瘍形成を治療または予防するための、請求項10記載の使用。
【請求項15】
十二指腸潰瘍または胃潰瘍を治療または予防するための、請求項10記載の使用。
【請求項16】
1または2以上の式(I)の化合物に加えて、本質的に、抗菌活性剤、別のプロトン阻害剤およびH2受容体アンタゴニストなどの別の胃保護物質、制酸剤、アルギン酸塩ならびに運動促進剤からなる群より選択される1以上のメンバーを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
(i)1または2以上の、請求項1〜4のいずれか1項で規定された式(I)の化合物と、(ii)治療に使用するための1または2以上の潰瘍誘発性抗炎症薬との併用であって、潰瘍誘発性抗炎症薬が、アセチルサリチル酸(ASA)、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、フェナセチン、イブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ピロキシカム、テブフェロン、ナブメトン、テニダップ、アルコフェナク、アンチピリン、アミモピリン、ジピロン、アニモピロン、フェニルブタゾン、クロフェゾン、オキシフェンブタゾン、プレキサゾン、アパゾン、ベンジダミン、ブコローム、シンコフェン、クロニキシン、ジトラゾール、エピリゾール、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルフェナム酸、グラフェニン、インドプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、サリジファミド、スリンダク、スプロフェン、トルメチン、ナブメトン、チアラミド、プロクアゾン、ブフェキサマク、フルミゾール、チノリジン、チメガジン、ダプソン、ジフルニサル、ベノリレート、ホスホサル、フェンクロフェナク、エトドラク、フェンチアザク、チロミソール、カルプロフェン、フェンブフェン、オキサプロジン、チアプロフェン酸、ピルプロフェン、フェプラゾン、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム、テノキシカムからなる群より選択される、前記併用。
【請求項18】
(i) 1または2以上の、請求項1〜4のいずれか1項で規定された式(I)の化合物、(ii)治療に使用するための1または2以上の潰瘍誘発性抗炎症薬、および任意で(iii)製薬上許容される担体を含む医薬組成物であって、潰瘍誘発性抗炎症薬が、アセチルサリチル酸(ASA)、サリチル酸ナトリウム、アセトアミノフェン、フェナセチン、イブプロフェン、ケトプロフェン、インドメタシン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、ナプロキセン、ピロキシカム、テブフェロン、ナブメトン、テニダップ、アルコフェナク、アンチピリン、アミモピリン、ジピロン、アニモピロン、フェニルブタゾン、クロフェゾン、オキシフェンブタゾン、プレキサゾン、アパゾン、ベンジダミン、ブコローム、シンコフェン、クロニキシン、ジトラゾール、エピリゾール、フェノプロフェン、フロクタフェニン、フルフェナム酸、グラフェニン、インドプロフェン、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸、サリジファミド、スリンダク、スプロフェン、トルメチン、ナブメトン、チアラミド、プロクアゾン、ブフェキサマク、フルミゾール、チノリジン、チメガジン、ダプソン、ジフルニサル、ベノリレート、ホスホサル、フェンクロフェナク、エトドラク、フェンチアザク、チロミソール、カルプロフェン、フェンブフェン、オキサプロジン、チアプロフェン酸、ピルプロフェン、フェプラゾン、ピロキシカム、スドキシカム、イソキシカム、テノキシカムからなる群より選択される、前記組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2006−509720(P2006−509720A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−505040(P2004−505040)
【出願日】平成15年5月16日(2003.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2003/005171
【国際公開番号】WO2003/097041
【国際公開日】平成15年11月27日(2003.11.27)
【出願人】(502184552)メルクル・ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】